開催概要

はじめに

様々な分野において、インクルーシブで持続可能な社会の実現が目指されています。
日本の福祉・芸術の分野の中でも、2018年6月に「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が施行され、作品発表の機会や、評価の整備、この分野に関わる人材育成等の活動目標が掲げられました。

また、近年の世界的潮流として、障がいのある作家の作品を現代美術として取り上げる傾向が加速しています。 例えば2013年の第55回ヴェネチア・ビエンナーレでは、アートとは異なる分野の専門家が制作した作品(ユング、シュタイナー、ヒルマ・アフ・クリント)や、澤田真一など障がいのある作家の作品を現代美術の作家と共に展示したことで大きな反響を呼びました。その後もニューヨーク近代美術館や、パリのポンピドゥーセンター等の世界を代表する美術館で、これまでアール・ブリュット、アウトサイダー・アートと呼ばれてきた作品の評価・収蔵が進んでいます。 最新の動向としても、2023年にカリフォルニアで50年の歴史をもつ障がい者のための施設「クリエイティブ・グロウス・アート・センター」の作品114点が、サンフランシスコ近代美術館に購入され、2024年4月から記念展覧会「Creative Growth: The House That Art Built」が開催されています。日本でも、公立美術館で唯一収蔵方針に「アール・ブリュット」を掲げている滋賀県立美術館が、購入や寄贈を通して、コレクションを充実させています。

障がいのある人の作品を現代美術として包括的に紹介し、評価・価値付けを行い、作品を収集する動きは、日本国内ではまだ小さな流れかもしれませんが、世界的には確かな流れになりつつあります。本シンポジウムでは、このような世界的潮流の最前線を、クリエイティブ・グロウス・アート・センターのトム・ディ・マリア氏や、マージナルな表現活動に取り組むプロフェッショナルを招いてお話を伺います。また、障がいのある人に限らず、女性やBIPOCなど、これまで美術の主流にいなかった人々の作品が評価を受ける際に直面する困難や課題についても、美術の問題として、そして社会の問題として考える機会としたいと願い、当シンポジウムを企画いたします。

日時

2024年11月30日(土)

第1部: 13:00ー14:30
第2部: 14:45ー16:15

場所 京都市立芸術大学 C棟 講義室1
定員 100名
参加費 無料(事前申込制)
  • 日英同時通訳あり
  • 後日、記録映像のアーカイブ配信あり
  • 主催:大阪府
  • 実施主体:一般社団法人日本現代美術振興協会、カペイシャス
  • 企画アドバイザー: 小出由紀子事務所
  • コーディネーター: 田崎奈央
  • 研究協力:京都市立芸術大学 美術学部 准教授 谷澤紗和子

プログラム・登壇者

第1部 13:00ー14:30

クリエイティブ・グロウスの50年の軌跡: 自動車整備工場からサンフランシスコ近代美術館まで

カリフォルニア州オークランドにあるクリエイティブ・グロウス・アート・センターは、障がい者のためのアート・センターです。1974年の創設から現在まで50年に及ぶ活動の歴史を、社会の動きに照らしつつ振り返り、ターニングポイントとなった出来事について語っていただきます。アメリカにおける、アウトサイダー・アートと現代美術の関係性、現代美術におけるアウトサイダー・アートの位置付け、より広く「Art and Disability」について、クリエイティブ・グロウスのトム・ディ・マリア氏に、同氏と長年交友がある小出由紀子氏がお話を伺います。

登壇者
  • トム・ディ・マリア (クリエイティブ・グロウス・アート・センター 名誉ディレクター)
聞き手
  • 小出由紀子 (小出由紀子事務所 主宰)

第2部 14:45ー16:15

障がいのある人の作品を、現代美術として評価していくこと

これまで美術の主流にいなかった人々の表現に注目し、研究や批評、企画の対象として積極的に取り組むプロフェッショナルを招いて、活動の意欲や意義を伺います。また、障がいのある人など、マージナルな作品と向き合う際に経験する楽しさ、難しさ、課題とともに可能性について、さらには人間にとっての芸術表現は何かについて、共に学び考える機会にしたいと思います。

登壇者
  • 保坂健二朗 (滋賀県立美術館 ディレクター)
  • 大内郁 (東京都渋谷公園通りギャラリー 学芸員、(公財)東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 文化共生課長)
  • トム・ディ・マリア (クリエイティブ・グロウス・アート・センター 名誉ディレクター)
  • 小出由紀子 (小出由紀子事務所 主宰)
聞き手
  • 山本浩貴 (文化研究者、実践女子大学 准教授)

プロフィール

トム・ディ・マリアの写真

トム・ディ・マリア

クリエイティブ・グロウス・アート・センター 名誉ディレクター

1999年よりクリエイティブ・グロウス・アート・センターのディレクターを務める。美術館やギャラリー、国際的デザイン企業との協働を通して、障がいのあるアーティストをコンテンポラリー・アートの領域へ導いてきた。クリエイティブ・グロウスを代表するアーティストについて、そして彼らとアウトサイダー・アートの関係、現代文化との関係について、世界各地で講演を行なっている。カリフォルニア大学バークレー校のバークレー美術館並びにパシフィック・フィルム・アーカイブのアシスタントディレクターを務めた後に現職。ロチェスター工科大学で美術学士、メリーランド美術大学で美術学修士を取得。2019年には、ニューヨークのアメリカン・フォークアート・ミュージアムより「ヴィジョナリー・アワード」を受賞。

小出由紀子の写真

小出由紀子

小出由紀子事務所 主宰

1990年にシカゴでインディペンデント・キュレーターとして活動を開始。アール・ブリュットやアウトサイダー・アートの分野で先駆的な展覧会を多く企画。2000年東京に小出由紀子事務所を開設。主な展覧会に「ビル・トレイラー展」(ザ・ギンザ・アートスペース、Collection de l’Art Brut, Lausanne、1992年)、「Art Incognito」(Collection de l’Art Brut, Lausanne、1997年)、「ジュディス・スコット展」(資生堂ギャラリー、2001年)、「アフリカン・アメリカンキルト 記憶と希望をつなぐ女性たち」(資生堂ギャラリー、2007年)、「ヘンリー・ダーガー展」(ラフォーレ・ミュージアム原宿、2011年)など。編書に『アウトサイダー・アート』(求龍堂、2000年)、『ヘンリー・ダーガー 非現実を生きる』(平凡社、2013年)、『福田尚代作品集2001–2013』(2014年)、『鵜飼結一朗初期作品集』(2023年)など。様々な区分を超えて、人が表現することの源(ねっこ)を探りたい。

保坂健二朗の写真
撮影:木奥恵三

保坂健二朗

滋賀県立美術館 ディレクター

1976年生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(美学美術史学分野)修了。2000年より20年まで東京国立近代美術館(MOMAT)に勤務。2021年より現職。企画した主な展覧会に「フランシス・ベーコン展」(MOMAT、2013年)、「Logical Emotion: Contemporary Art from Japan」(ハウス・コンストルクティヴ他、2014-15年)、「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」(MOMAT、2016年)、「日本の家 1945年以降の建築とくらし」(MAXXI国立21世紀美術館およびMOMAT、2016-17年)、「人間の才能 生みだすことと生きること」(滋賀県立美術館、2022年)、「AWT FOCUS 平衡世界 日本のアート、戦後から現代まで」(大倉集古館、2023年)など。

大内郁の写真

大内郁

東京都渋谷公園通りギャラリー 学芸員、(公財)東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 文化共生課長

1977年生まれ。玉川大学文学部芸術学科卒業。千葉大学大学院教育学研究科美術教育専攻(芸術学)修了。千葉大学大学院社会文化科学研究科博士課程単位取得満期退学。大学院時代に障がいのある人や社会的マイノリティと表現について関心を深め、研究テーマとした。また、研究室が主体となる地域アートプロジェクトに参加。コミュニティアート事業企画会社での実習や交響楽団事務局企画制作部アシスタント、地方公共団体文化施設開設準備部署勤務など。2013年より藁工ミュージアム(高知)にてアール・ブリュットの展覧会等企画運営。2016年秋よりアーツカウンシル新潟プログラムオフィサー(社会包摂担当)。2018年冬に(公財)東京都歴史文化財団東京都現代美術館文化共生課に着任、2019年夏より現職。

山本浩貴の写真
撮影:吉田志穂

山本浩貴

文化研究者、実践女子大学 准教授

1986年千葉県生まれ。2010年一橋大学社会学部卒業、2013年ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート修士課程修了。2018年、ロンドン芸術大学博士課程修了。アジア・カルチャー・センター(光州)リサーチ・フェロー、香港理工大学ポストドクトラル・フェロー、東京芸術大学大学院助教、金沢美術工芸大学講師などを経て現職。単著に『現代美術史――欧米、日本、トランスナショナル』(中央公論新社、2019年)、『ポスト人新世の芸術』(美術出版社、2022年)。共編著に『この国(近代日本)の芸術――〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』(小田原のどかとの共編、月曜社、2023年)。

参加申込

申し込み受付開始:10月1日(火) 定員100名 ※参加無料、事前申込制

以下のフォームよりお申し込みください。定員に達し次第、申し込みを締め切らせていただきます。
フォームからの申し込みが難しい方は電話にて受付いたします(tel:06-6777-8303)。

  • 本シンポジウムは、1部と2部を通してご参加頂くことを推奨しています。
    2部のみ参加申込みの場合は、お席がご用意できない可能性があります。
    また、開始時間に10分以上遅れる場合、お席のご用意ができない可能性があります。
  • 車椅子専用席が(後方に4席)ございます。
    来場に際して配慮を希望される場合は、事前にArt to Live 事務局までご相談ください。
申込フォームへ

アクセス

京都市立芸術大学 C棟 講義室1

〒600-8601 京都市下京区下之町57-1

  • 地下鉄烏丸線・JR各線・近鉄京都線「京都」駅下車 徒歩6分
  • 京阪電車「七条」駅下車 1番出口から徒歩10分
  • 市バス 4、7、16、81、205、南5号系統 「塩小路高倉・京都市立芸術大学前」下車すぐ
  • 一般向け駐車場はございません。
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