1962年大阪市生まれ。1988年から2016年まで実家の中華料理店を手伝いながら、1995年よりアトリエひこに参加。週2回ほどフィールドワークや制作活動を続けてきた。
松本は、カレンダーやメモ帳、手紙などに、ぎっしりと独特の文字を書き重ねた作品をつくる。登場する文字は彼の生まれ育った環境と親密に関わり、なかでも漢字が多く「舞・男・女・鬼・火・命」などは繰り返し出てくる。このスタイル形成のきっかけは、3歳に始まる歌舞伎鑑賞にまで遡り、その後、学校や施設で書写を学び、独学で文字を書き写していたことが基礎になっている。また、実家は中華料理店を営み、毎朝、店用の新聞三紙を取りに行く役割も勤めました。新聞の見出しや写真の大きさから社会的事件の重大さを感じながら、漢字と意味を結びつける独自の感覚を形成していったようだ。
カレンダーに文字を書くことは1997年頃から始まり、当初は冷蔵庫に貼られた1ヶ月ごとのカレンダーに、母が記した予定の上から細かな文字で埋め尽くしていた。溺愛されていた父が急逝した2002年以降は、日めくりカレンダーにも書き込むようになる。父が不在となった自宅で、まるで文字に憑依されたかのように夜な夜な書き耽り、日めくりカレンダーの作品は、彼のライフワークとなり、2020年晩秋、新型コロナウィルスへの感染に誤嚥性肺炎も重なり、重篤な入院生活を強いられるまで続いた。