1965年大阪市生まれ。アトリエひこ(大阪市平野区)は、大江正彦(通称・ひこくん)の名前に由来し、彼はそこで週3日制作している。自宅でも、食卓や自室の机で時間があれば絵を描くなど、創作は日常の一部となっている。

生まれつき心臓に疾患を抱えていた大江にとって、静かに楽しめる絵を描くことは、自然と生活の中心となった。当時、大阪には知的障がいのある人が通える絵画教室が存在せず、既存の施設にも馴染めなかったため、1991年から京都府亀岡市にある「みずのき寮」の故・西垣籌一氏のもとへ週1回通い、1997年まで続けた。
「大阪でも創作活動ができる場所を」という関係者の思いが結実し、1994年に「アトリエひこ」が設立された。以来、大江は30年以上にわたり創作を続けている。

初期の作品には、キャンバスいっぱいに愛らしく躍動感のある動物が描かれ、油彩やアクリル絵具を厚く塗り重ねた筆跡豊かな画面には、絵具と戯れるような純粋な喜びがあふれている。2023年1月、あることがきっかけとなり、黄色い画面の中央に青い丸が浮かび上がる抽象画へと移行。その青い丸は時に花や扇風機、キャラクターの姿に変化しつつも、黄色の世界を描き続けている。
いたずら好きでやさしい性格は彼の絵画にも滲み出ており、アトリエひこに集うアーティストやクリエイターたちを引き寄せる「創造の源泉」とも言える存在である。

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